週末のひとりごと– category –
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名前のない感情をどう抱きしめるか
言葉にできない気持ちがある。悲しみでもなく、怒りでもなく、喜びでもない。ただ胸の奥にふっと浮かんでは、すぐに霧のように消えていく。その感情には、まだ名前がない。 だけど確かにそこに在る。誰にも見えない場所で、静かに息をしている。 感情には... -
記憶の片隅で鳴り続ける音
音楽は素晴らしい。そんな言葉を口にすると、たいていの場合、「どんなジャンルが好き?」とか「誰のファン?」とか、「ライブにはよく行くの?」なんて質問が返ってくる。でも、そのどれにもはっきりと頷くことはできない。僕は、いわゆる“音楽好き”では... -
選べることの贅沢と不安
コンビニの棚に並ぶ数えきれないほどの飲み物。アプリの中に無限に流れてくる動画。レストランのメニュー、洋服の色、キャリアの選択、住む場所、付き合う人——現代は「選べること」に満ちている。 選択肢があるということは、豊かさの象徴だ。戦後の日本、... -
時間は積み重なるものか、流れるものか
時間は、いつも目に見えないかたちで隣にいる。音もなく、姿もなく、それでいて確実に人の輪郭を削っていく。 誰もが時間に包まれて生きているが、その捉え方は人によって異なる。積み重ねるものとして感じる者もいれば、流れていくものとして眺める者もい... -
孤独と一人は同じではない
夜の公園に佇んでいると、時折、不思議な感覚に包まれる。 誰もいないはずの場所なのに、どこか満たされた気配がする。遠くで誰かが歩く音、木々のざわめき、空をかすめる風の気配。それらすべてが、静かに自分の存在を肯定してくれているような、そんな錯... -
“当たり前”の崩壊が教えてくれること
朝が来ること。目を覚ませば、同じ天井が見えること。冷蔵庫を開ければ冷たい空気が頬を撫で、蛇口をひねれば水が流れること。そうした日常のかけらを、人は疑うことなく「当たり前」と呼ぶ。 だが、当たり前は脆い。ある日、それが唐突に崩れることがある... -
忘れる力とは、弱さか強さか
人は、忘れる生き物だ。 名前を忘れ、顔を忘れ、あれほど胸を締めつけた出来事でさえ、時間が経てば輪郭を失っていく。 かつての痛みや喜びさえも、まるで夢の断片のようにぼやけてしまう。 そうして記憶の奥に沈んだものを見つめるとき、ふと問いが浮かぶ... -
制約からの幻想的な解放
大人になるとは、いったいどういうことなのだろうか。 その問いを抱いたのは、ふと街の喧騒を抜けた路地裏で、子どもたちが夕陽の中を駆け抜ける姿を見かけたときだった。僕は立ち止まり、なぜだか動けなくなった。夕焼けのなかで笑い合う子どもたちは、昔... -
歩くこと、それは自由のかたち
人は、時間に追われている。 朝の光が差し込む前に目覚ましの音が鳴り、あくびを飲み込むように身支度を整え、電車のホームへと足を運ぶ。 仕事が始まる前にメールを片付け、昼までに提出する資料の構成を頭の中で組み立てる。午後は会議があり、夕方には... -
死に向かう僕たちのプロセス
人生のゴールとは何だろうと考える。 金を稼ぐことか。名声を手に入れることか。家族を持つことか。何かを成し遂げることか。 けれど、それらはすべて中間地点に過ぎない。満たされても、すぐに新たな欲望が立ち上がる。人はゴールらしきものに触れても、...